慣れた手つきで禁止帯を乗り越え、悲惨な事故現場を平気で歩いてゆくこの男は検死官;妖牙 雜 だった。重そうな棺桶ほどの医療バッグを一本背に抱えている。

そう答えたのは昨日の調査エージェントであった少年、忍武君であった。
 あーそんなんやめやめ!
 そんなものあのトンッでも呪術師のの親父にでも任せてろ。
そういって後片付けはせず、本体だけ運び用の霊柩車につめこんでさっさと女瀬川北の自宅兼本部である妖牙寺だった。
 ふう、
 轢死体ねぇ、
 はたして
 自殺か他殺か。..
やっと一息つけたザツは霊安室に横たえた遺体をちらとみやる。ちらとみやる。

遺体の傷を確かめたザツはどうやら何か重大な意味に 気付いたようだった。

後ろ背ごしに弟に向かって質問を投げ掛けるザツ

そこまで言って忍武も気付いたようだった。

そういってザツは立ち上がり、手術室へと向かうのだった。
ここは大阪医療大学病院 、そこに被害者男性の夫人と数人の付き添いの警察官のがいた。

手術室から出てきたばかりのザツを夫人が問い詰める。

にこやかに答えるザツ青年。

ほっと胸を撫で下ろす夫人。

とても頼もしげに保証するその顔はある歪な自信に満ちていた。
そうとも気づかず、夫人は夫の面会時間スレスレまで付き添ったが被害者男性の意識は戻らず諦めて帰ったのだった。
ゾロゾロと巡回検診が終わった誰もいないフロアはシーンと静まりかえっていた。
しかし、うごめく怪しげな影が一人。

不気味に卑屈な笑みを浮かべるこの謎の人物はこっそりと誰もいない病室に侵入すると
きらりと光るナイフを取り出した。

そうごちると手を人工呼吸機の喉元へ近づけた。

とそういいかけた時、 突然、薄暗い病室に照明がつけられ。
大勢の警察官が駆け込んだ、罠だったのか。

そこでさっき帰ったはずの白衣に身を包んだザツ青年が登場してキメた。

証拠を突きつけられ言い訳できずもとる加藤さん。

そしてザツ青年が切り出した。

発言の矛盾をつきにかかるザツ青年

当たり前といったかんじで容疑者は言い逃れる。

ザツ青年はかまわずあの日の状況証拠を言いまくる。

さすがの容疑者もしどろもどろになる。

ザツ青年はその証拠、生きているように見せかけフェイクしたベットに横たわっている死体を指差した。

そして、決定的なのが腰から臀部にかけてのひどい骨折と青アザ
です。自殺者が顔面から地面めがけて飛び込むなんて有り得ない。

やがてビジョンが浮かび上がった。それは呑気に信号待ちで
空を見上げてボーっとしていた男性が突然、然突後ろからはねられ線路上に吹き飛ばされたあと、電車に巻き込まれ粉々となる無残なシーンだった。

そして一通り自分の推理を言い終わったザツ青年は相手の言葉を待った。

ここまで来てまだ言い逃れようとする容疑者。けれどもザツ青年は確信を持って動じない。

そういってザツ青年はクルリと振り返り後ろのカーテンをひるがえした。

その顔を見た瞬間、容疑者の眼の色が変わった。

言い寄るザツ青年。

後ろで忍武少年がボソッと呟く、何の事を言ってるかはもちろん病室で似合わぬ大槍を背負っているこのトンデモ親父であることは言うまでもないこてであろう。

逮捕された男が供述しはじめた。

必死で弁明する男。

あハイ
元カレで
ものすごい鉄ちゃんの電車男で
オタクが過ぎて
付き合いきれなくなって別れたんですけど
容疑者の女性は思わぬ証言者の登場で明らかに動揺しているようだ
実は彼の部屋から強力な無線クラッキングツールが発見されましてね
彼はそれで無線の信号を発して遮断機を操作してたというワケですよ

だがその気持ちはそよ子さんに逆に利用され
男性をはね
電車に轢かせてしまうという結果になってしまった
そよ子さんは
当然死んだと思ったのでしよう
事実そうです
しかし私は葬儀屋の検死が終わるまでは絶対に
遺体には見せ店触らせもしません
家族でさえもです
そこでわたしは
『エンバーミング』と呼ばれる
遺体再生治療を施行し
バラバラになった死体を元通りにしました
見事なものでしょう?
それで被害者男性が生きていると思わせて
あなたをおびき寄せました
まぁ家族も騙すことになりますが...
目的のためならばどんな手段も厭わないザツ青年の冷たい声が響く
うっ!!
改造された遺体を覗きこんだ容疑者女性は悲鳴を上げた
つながれ修復された遺体には人工呼吸機やらパイプやらがパイプつがれて
肌の色はピンク色に染まり妙に生き生きとしていた
そして案の定
あなたはここに戻って来た
あなたの車を調べればわかるはずですよ
男性をはねた跡がね
ザツ青年は静かにそう断定した
もう決定的だった

敗北を悟り、畏れおののく容疑者女性。
それを遥かに高く嘲笑うかのようにザツ青年はにやついて言った。

家族3人ここに集結せり。

1,[本当に怖かったですよー]

2,ここは寝静まった丑三つ時の島本町駅周辺の踏切

 

 

 

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